マッチ売りの少女その1

マッチ売りの少女という物話は、これまで悲劇的に捉えられてきたが、もはやその認識は改めざるをえない時代になったようだ。
「将来はマッチ売りになりたい。」と考える若者は後を絶たず、マッチ売りを育成するための専門学校には、入学願書が山のように届き、一流大学以上の狭き門となっているという。


童話の時代には全く売れなかったマッチが現代になって売れるようになった理由を、西東京大学経営学部教授でマッチ売りに詳しい町瓜氏はこう分析する。

「まず一つに、営業力の強化が挙げられます。童話の方を見てください。売ろうという意思がほとんど感じられないではないですか。道端に立って、買い手が来るまでじっと待っているなどセールスレディとして問題外です。ティッシュペーパー配り以下ですよ。」
「そしてもう一つは、マッチ自体に付加価値が付けられたことです。童話の少女がこの商売に失敗したのは、売り物が本当にシンプルなただのマッチだったからです。こんなものに魅力もへったくれもあったものじゃありません。」

氏の指摘を聞くと、古来伝統のマッチの売り方にこそ問題があったということであり、現在の隆盛はむしろ必然だという印象すら受ける。
そしてそれは、ほぼその通りなのであろう。現在ではアンデルセン作の「マッチ売りの少女」は、マッチ売り用のテキストの「失敗例」の項に掲載されているのであり、絵本などは「教育に悪い」として本棚から撤去されている有り様なのである。

(続く)